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【学参詳細レビュー】システム英単語

 

能書きばかり書いていても仕方ないので、このブログのメインコンテンツにしようと考えている教材レビューに移ろう。記念すべき1記事目はベタに単語帳の紹介から。

 

「速読英単語」「ターゲット1900」「DUO3.0」……

大学受験にしろ、一般の英語学習にしろ、避けては通れないのが語彙力強化。横文字で言うとボキャビル。

 

その需要に応えてか、実にたくさんの単語集が世に出ています。

 

「長文読解の慣れも高めたいから速単(速読英単語)だな」だとか、「背景知識もつけたいからリンガメタリカやな」だとかいうように、特定の用途を付すならトップは様々変わってくるだろうが、どんな高校生も触れるべき、もっともベーシックなボキャビル(つまり、中学英語から高校英語に上がってきて一気に単語を習得しないといけなくなった状況で行うべきボキャビル)に向く、大学受験単語帳のthe bestと言えば、このシステム英単語ではないだろうか。

 

 

今日はこの通称シスタンについて紹介したい。

 

この単語帳の良さを箇条書きで挙げるとするならば

  

① 章立てによる単語選別の圧倒的な精度

② それだけで価値のある第5章「多義語」

③ コロケーション学習に最適なミニマルフレーズ

④ やりこみのためのカード・CD・問題集

 

である。1つずつ見ていこう

 

① 章立てによる単語選別の圧倒的な精度

 

 言うまでもないが、単語には「重要度」がある。要は「試験でどれくらいの頻度で登場するか」が重要度なわけだが、シスタンはこの重要度の選別の面で他の単語帳から一歩ぬきんでている。

全5章の構成で、第1章から第4章まではこの重要度順に単語が分けられている。序盤の1章2章なんかは「あー、これは知っとかなあかんな」と指導者なら頷きが続くような単語が並ぶ。

例えば、センター試験第6問の長文にて、シスタンの1章2章に収録されている単語をマーキングしていったらどうだろうか。読解に必要な単語ほぼすべてにマーカーが付されることになる。1章2章で1200語がまとめられているが、そのどれもが高校英語の中核をなすような単語であり、何1語となく無駄な語がないのである。筆者は前書きにてのべ8000回分の入試問題を調査したと書いているが、その統計データと筆者の選球眼がこの無駄のない網羅さを演出しているのだろう。

 

 

② それだけで価値のある第5章「多義語」

 

 多くの受験生は多義語の重要性を分かっていない。figureという単語を見ていくつの意味が思い浮かぶだろうか。既知の意味が1系統しかなかった場合、その意味を盲信したまま文章を読み進め、行き着く先は誤読に誤答である。出くわしたのが全く知らない単語であるならば、せいぜいその意味を推測するにとどまることと比較すると、多義語を一側面でしか捉えていないというのは読解上至極危険なのである。

 そのような背景があるのにも関らず、多義語にフォーカスを当てた単語帳はなかなか見ない。面白い試みのものもあるが、大学受験英語に一番効果があるのはこのシステム英単語の第5章だろう。第5章は「多義語のbrush up!」というサブタイトルのもと、約200語の多義語がまとめられている。シスタンの価値はこの第5章だけでもあるだろう、とも言える逸品なのでぜひ1,2週間ほどで集中してやりきっておくと後々大きく効いてくる。

 

 

③ コロケーション学習に最適なミニマルフレーズ

 

 システム英単語の一つの大きな特徴は、単語が見出し語だけで載っているのではなく、「ミニマルフレーズ」という複数語のかたまりでその単語が取り上げられている。よくある〈動詞+目的語〉や〈形容詞+名詞〉のかたまりで覚えられる、というのは最終的にアウトプットを意識した学習にも効果的である、という高尚な目的も去ることながら、例えば「この動詞はtoが続くんだな」とか「実はこの動詞は前置詞とらずにいきなり名詞が続くんだな」と言ったような事項が自然と頭に落ち着いてくることが良いのである。これもほかの単語帳にはなかなか見慣れない仕掛けだ。

 

 

④ やりこみのためのカード・CD・問題集

 

 そしてこの単語帳、周辺アクセサリーの優れたガジェットなのである。もちろん1000円程度で買える単語帳本体だけで十分恩恵はあるが、その他やりこみのための様々な付属品が別売りで販売されている。

 これもまたどこかで記事にするが、ボキャビルの力技はカード化なのである。結局は古くから伝わる「単語カード」がやはり強いのである。シスタンに収録されているこのカードはミシン目さえ切り取れば自分で作る手間は省けるのでなかなかよい。

 

また、CDは移動時間を勉強時間に変える必須ツールだ。落として持ち込めばどこでだって耳から復習できる。

 

そして極め付けはこの準拠問題集。もちろんテストなんて塾や学校が準備してやればよいのだが、これをさらに持っておけば単調になりがちなボキャビルの日々に彩を与えてくれる。問題集が付いている単語帳は少ないが、覚えたことのアウトプットを考えると、意外と重要なのではないだろうか。

 

そんなこんなで良いことばかりなこのシスタン。

私は高校生を指導するときには必ずシスタンを最初のボキャビル教材にする。私が正解だと感じているやり方で高1の間にぶん回させておくとその後2年間の学習が最大限効率化される。もちろん語彙力がすべてではないが、すべての土台となっているのは確かなのだ。そのための一番の教材として、このシステム英単語をお勧めする。