大学受験 英文法学参の分類
ボキャビルと同時に、序盤の英語学習でぶち当たるのが基礎的な文法学習だ。
4技能化の潮流に「文法学習は不要」という主張がどこでもなされているが、それはListeningやSpeakingの学習量に対して文法や読解ばかり行われていることに対してなされるべき主張であって、「不要」というような極端な言い方は全くもってよくない。脳が出来上がった状態で外国語を効率よく習得しようとするなら、基礎的な文法学習は必要不可欠であるし、良かれ悪かれ入試問題でも文法問題が直接問われるのだから受験生としては避けては通れない。(現場を変えるには入試を変えればよい、というのは短絡的で浅はかかというとそうでもないだろう、というのが私の意見。これもまたどこかで記事にしようと思います。)
さて、この文法学習はどう進めていったらよいのだろうか。大学受験が一応のゴールであって、現在ちゃんとした予備校なり進学塾なりで本格的な授業とそれに付随する演習をこなしていける環境にある人ならば、それを信じて頑張っていけばよい。(「ちゃんとした」「本格的な」というのはずいぶん曖昧な言い回しですが、ここではそれがテーマではないので一旦スルーしてください)
一方で現在そのような状況でない人であったり、ある程度の独学を通そうと思っていたり、授業に先だってどんどん進んでいきたいと思っている人はどのような教材に当たればよいのだろうか。
思うに、
① 通読はしないが、新しく学ぶ文法の導入や調べものに資するリファレンス本
『総合英語FOREST(桐原書店)』
『英文法解説(金子書房)』
『ロイヤル英文法(旺文社)』など
② 通読でき、特につまずきやすいポイントを分かりやすく説明しているナビ本
『深めて解ける英文法(学研)』
『仲本の英文法倶楽部(代々木ライブラリー)』など
③ 知ったことを実際の英文に適用できるかを試していくことで定着を図るドリル本
『英語標準問題1100(桐原書店)』
『世界一わかりやすい英文法・語法の特別講座(中経出版)』など
の3種類をレベルや状況に応じて準備すればよいのではないだろうか。当たり外れももちろんあるが、市場にも十分に良い本が出回っている。前回のシスタンの記事同様、英文法の学参についても詳細レビューをしていくが、ひとまずはこの分類枠組みに沿って紹介していこうと思う。
【学参詳細レビュー】システム英単語
能書きばかり書いていても仕方ないので、このブログのメインコンテンツにしようと考えている教材レビューに移ろう。記念すべき1記事目はベタに単語帳の紹介から。
「速読英単語」「ターゲット1900」「DUO3.0」……
大学受験にしろ、一般の英語学習にしろ、避けては通れないのが語彙力強化。横文字で言うとボキャビル。
その需要に応えてか、実にたくさんの単語集が世に出ています。
「長文読解の慣れも高めたいから速単(速読英単語)だな」だとか、「背景知識もつけたいからリンガメタリカやな」だとかいうように、特定の用途を付すならトップは様々変わってくるだろうが、どんな高校生も触れるべき、もっともベーシックなボキャビル(つまり、中学英語から高校英語に上がってきて一気に単語を習得しないといけなくなった状況で行うべきボキャビル)に向く、大学受験単語帳のthe bestと言えば、このシステム英単語ではないだろうか。
今日はこの通称シスタンについて紹介したい。
この単語帳の良さを箇条書きで挙げるとするならば
① 章立てによる単語選別の圧倒的な精度
② それだけで価値のある第5章「多義語」
③ コロケーション学習に最適なミニマルフレーズ
④ やりこみのためのカード・CD・問題集
である。1つずつ見ていこう
① 章立てによる単語選別の圧倒的な精度
言うまでもないが、単語には「重要度」がある。要は「試験でどれくらいの頻度で登場するか」が重要度なわけだが、シスタンはこの重要度の選別の面で他の単語帳から一歩ぬきんでている。
全5章の構成で、第1章から第4章まではこの重要度順に単語が分けられている。序盤の1章2章なんかは「あー、これは知っとかなあかんな」と指導者なら頷きが続くような単語が並ぶ。
例えば、センター試験第6問の長文にて、シスタンの1章2章に収録されている単語をマーキングしていったらどうだろうか。読解に必要な単語ほぼすべてにマーカーが付されることになる。1章2章で1200語がまとめられているが、そのどれもが高校英語の中核をなすような単語であり、何1語となく無駄な語がないのである。筆者は前書きにてのべ8000回分の入試問題を調査したと書いているが、その統計データと筆者の選球眼がこの無駄のない網羅さを演出しているのだろう。
② それだけで価値のある第5章「多義語」
多くの受験生は多義語の重要性を分かっていない。figureという単語を見ていくつの意味が思い浮かぶだろうか。既知の意味が1系統しかなかった場合、その意味を盲信したまま文章を読み進め、行き着く先は誤読に誤答である。出くわしたのが全く知らない単語であるならば、せいぜいその意味を推測するにとどまることと比較すると、多義語を一側面でしか捉えていないというのは読解上至極危険なのである。
そのような背景があるのにも関らず、多義語にフォーカスを当てた単語帳はなかなか見ない。面白い試みのものもあるが、大学受験英語に一番効果があるのはこのシステム英単語の第5章だろう。第5章は「多義語のbrush up!」というサブタイトルのもと、約200語の多義語がまとめられている。シスタンの価値はこの第5章だけでもあるだろう、とも言える逸品なのでぜひ1,2週間ほどで集中してやりきっておくと後々大きく効いてくる。
③ コロケーション学習に最適なミニマルフレーズ
システム英単語の一つの大きな特徴は、単語が見出し語だけで載っているのではなく、「ミニマルフレーズ」という複数語のかたまりでその単語が取り上げられている。よくある〈動詞+目的語〉や〈形容詞+名詞〉のかたまりで覚えられる、というのは最終的にアウトプットを意識した学習にも効果的である、という高尚な目的も去ることながら、例えば「この動詞はtoが続くんだな」とか「実はこの動詞は前置詞とらずにいきなり名詞が続くんだな」と言ったような事項が自然と頭に落ち着いてくることが良いのである。これもほかの単語帳にはなかなか見慣れない仕掛けだ。
④ やりこみのためのカード・CD・問題集
そしてこの単語帳、周辺アクセサリーの優れたガジェットなのである。もちろん1000円程度で買える単語帳本体だけで十分恩恵はあるが、その他やりこみのための様々な付属品が別売りで販売されている。
これもまたどこかで記事にするが、ボキャビルの力技はカード化なのである。結局は古くから伝わる「単語カード」がやはり強いのである。シスタンに収録されているこのカードはミシン目さえ切り取れば自分で作る手間は省けるのでなかなかよい。
- ジャンル: 本・雑誌・コミック > 語学・学習参考書 > 学習参考書・問題集 > 高校・大学受験
- ショップ: 学参ドットコム楽天市場支店
- 価格: 2,160円
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また、CDは移動時間を勉強時間に変える必須ツールだ。落として持ち込めばどこでだって耳から復習できる。
そして極め付けはこの準拠問題集。もちろんテストなんて塾や学校が準備してやればよいのだが、これをさらに持っておけば単調になりがちなボキャビルの日々に彩を与えてくれる。問題集が付いている単語帳は少ないが、覚えたことのアウトプットを考えると、意外と重要なのではないだろうか。
そんなこんなで良いことばかりなこのシスタン。
私は高校生を指導するときには必ずシスタンを最初のボキャビル教材にする。私が正解だと感じているやり方で高1の間にぶん回させておくとその後2年間の学習が最大限効率化される。もちろん語彙力がすべてではないが、すべての土台となっているのは確かなのだ。そのための一番の教材として、このシステム英単語をお勧めする。
自己紹介③
②の記事の途中にありました、担任の先生との面談のシーン。
周りの友達と同じように塾に通いたい、という、学校の先生が受ける相談としては少し変なこの発言に対し、初老のその先生は「塾に行かんでもな、別に勉強なんて自由にできるんやから、まずはそれを精一杯やってみなさい」と答えられました。
その言葉を聞いた私は、塾に通わせてもらえなさそうな自分の立場を悲観することもなく、話の分からない大人だなと嘆くこともなく、ただただ「そっか。。。じゃあやってやるか」と心の中でドラマのようにつぶやいたのでした。
その次のテストから現在に至るまで、私自身は何事にも独学中心を貫いています。(そんな私がなぜ塾講師になったのか、というのはまた別の話です。これも記事にしますのでよければお読みください)
その面談後の「とは言っても、どうやって勉強すればいいんだ?」という問いかけから始まった私の独学路線は様々な試行錯誤や読書体験、対人体験を経て洗練されていき、結果、京都大学現役合格やTOEIC900点越えに代表される様々な成果に結びついていきます。その過程で行き着いた勉強方法や、役に立つ書籍、自分自身だけでなく自分の教え子たちの成功体験などを幅広く事細かに記事にしていくつもりです。
特に高校受験、大学受験を対象にしたものや受験英語だけではなく一般の英語学習についてのものには強いつもりです。興味のあるページがあればどうぞ読み進めていただければ幸いです。
自己紹介②
①の記事で述べましたように、受験産業に長く身を置いている私ですが、自分自身はどのような勉強機会を積んできたのか。これもまた、これから記事を書くにあたって、最初に簡単にまとめておきたいと思います。
西日本の田舎、いたって平凡な家庭に生まれた私は、長男として比較的自由に育てられました。
高卒の両親は教育ママパパとは到底離れた人で、もちろんお受験などとは無縁。私にさせた習い事もそろばんと習字くらい。勉強は「とにかく学校の宿題をきちんとやりましょう」といった程度でした。
ただ、昔から本を読むことと自然に触れるのがとにかく好きで、理科的な教養や漢字の読み書きには長けていて、そういったものが問われるテスト等で好成績を収めたときは、母親や先生に褒められて嬉しかったものでした。
しかし、躓くところにはちゃんともれなく躓き、分数の計算が不得手で同級生に指摘を受けたり、割合の概念も大して身に着けないまま中学校に上がっていた自覚がありました。
中学校に上がると、テストが本格化し、自分で思っていたほどの点数を取れなくなっていました。中学校に入って最初の定期テストの成績個人票のコメント欄に母から「英語と数学をもう少し頑張ってほしい」と書かれたことを今でも覚えています。そのときの数学の点数は、単なる正負の計算だけなのに60点、英語もアルファベットと至極単純な文、基本的な英単語だけだったのに79点だったこともよく覚えています。
そのテストが終わったときの二者面談で担任の先生に「みんなみたいに塾に行って勉強したい」と言いました。地方ではありましたが、地域の教育熱は意外と高く、周りの同級生たちは小学校の高学年くらいから塾におさまりはじめていました。幼げながら自分の中では「あいつには勝てるだろ」と心の中では見下していた子たちにも自分はそのうち負けてしまうのでないか。自分も塾に通いたい。。。
そうは思っていてもなんとなく親には言えない自分がいたからです。決して貧しい家ではなかったと体感していましたが、倹約的な家であることは確かで、しかも当時の自分は親に対して結構な引っ込み思案で自分で言うのもなんですが思慮深い遠慮がちな子どもでありました。だから、親に言えなかったその気持ちがあって、それをポロッと年老いた理科の先生につぶやいたのです。それが中1の6月。まだ12歳。
一気に時を経て先に結末をいうと、そのあと私は結局、塾や家庭教師の力を借りずに県内の上位高校に進学、その後も独学で勉強を続け京都大学に現役合格。それに加え、これまた別途スクールや留学などを経由せずにTOEICで900点オーバーの英語力やその他いくつかの資格を身につけて、自身のその成功体験を資本とする塾業界に身を投じるに至りました。
途中、重要なところを一気に飛ばしました。自慢臭く、また胡散臭くもある一風変わった経歴ですが、その中でしか得られなかった無形の財産がたくさんあるのです。塾講師として生きた現場でもそれを切り売りしていましたが、このブログでも様々言語化していけたらなと思っています。
(③に続きます)
自己紹介①
さて、筆者のmayuchoとはどのような人物なのか。これから書いていきます記事の内容と関連させながら紹介していきます。
現在は独立して自分の塾を立ち上げるための準備をしています。
年齢は会社で言うところの若手から中堅に移ってきたぐらいの様相をイメージしていただけたらと思います。
今は東京にいますが、その前は関西のやや田舎で街塾を運営していました。県下で複数教室出している規模の進学塾ではありましたが、その後転職した都市型の進学塾と比べると甚だ小さな塾でありました。
そこから様々な背景があって上京し、自身の塾講師としての経験を広げることになりました。実際、大学に入学した18歳のときからずっとこの仕事ばかりやっているなかで、中学受験・高校受験・大学受験の3つの領域すべてに積極的に足を突っ込んでいって、概算で1500名以上の生徒と合格の喜びを分かち合いました。
立場としても、駆け出しの学生講師から、一城をまとめる教室長、言い方悪いですが大手進学塾という巨大組織の中の様々な歯車などなど多様な視点を経験しました。
その中で自身が向き合ってきた経験や勉強法、参考書や問題集のレビューや最近の受験情勢などを書いていこうと思います。
(その②につづく)
ブログ開設のごあいさつ
このたび、ブログ「凜として学ぶ」を開設しましたmayucho(まゆちょ)と言います。以後よろしくお願いします。
ブログ自体は初めてではなく、学生時代のmixiに始まりその他幾つかのブログサービスで、それなりの期間、ブログを運営していたことがありました。今も継続更新中のものもありますが、またそれとは別にこうしてブログを設けることにしました。
大きな理由は、今まで続けてきた雑記ブログとは別に、自分がこれまで当事者として、また業界人として、受験産業に関ってきて得たものを世に書き起こしたいと思ったからです。
大部分が自己満足的な記事になるかもしれませんが、ブログというのは自己責任のもと何を書いてもよいというその自由さが売りの一つであるはずです。少しでも興味を持っていただければ嬉しいです。よろしくお願いします。